「concept」とは、「構想」「発想」「概念」という意味。ゲームコンセプトアートは、ゲームのコンセプトやイメージを伝えるための視覚的な設計図です。ゲームの世界観や雰囲気、テーマ、到達点などを表現するために描かれ、ゲームの企画書をアートにしたものと言えます。色合い、タッチ、構図などに配慮しながら描き、その画像を見た人にどんなゲームなのかを伝えることを目的としています。
ゲームアートコンセプトは、ゲームのビジュアルデザインの基盤となる重要な要素です。ゲームの世界観やキャラクターのデザイン、背景アート、アイテムのデザインなど、すべてのビジュアル要素を統一したコンセプトに基づいて作成します。この記事では、ゲームアートコンセプトの重要性や、その魅力について分かりやすく説明します。
ゲームコンセプトアートの目的とは?
パターン①:対社内への認識統一を図るため
ゲームコンセプトアートは、開発メンバーの認識を統一するためにゲーム開発の初期段階で描かれます。そのため、ゲームコンセプトアートはゲームの世界観や雰囲気、テーマや到達点を表すように描かれます。つまり、ゲームで表現したい内容が詰め込まれた企画書です。この企画書は、チームでゲーム制作をするときに「ここを目指そう!」という目標になります。そして、その目標に向かうために、これから何が必要かというディスカッションをしていくのです。ゲームコンセプトアートは、ゲーム開発メンバーに最初の原動力を生み出すと言えます。
パターン②:対社外へのアピールや承認を得るため
ゲームコンセプトアートは、社外へのアピールにも使用されます。ゲームを開発している会社は、クライアントやスポンサー企業にゲームコンセプトアートを見せてプレゼンテーションを行います。もちろん、企画書などの文字情報も提示しますが、文章から実際に制作されるゲームを想像することは容易ではありません。そんなときゲームコンセプトアートがあると、世界観やテーマが一目で伝達可能です。ゲームコンセプトアートの出来次第で承認が得られないこともあるので、コンセプトアートを担当するアーティストは細かい点まで気を配って作り上げます。
またゲームコンセプトアートは、ユーザーにとっては近々リリースされるゲームの期待感を高めることに役立ちます。ゲームコンセプトアートには世界観だけでなく、ゲームの背景や行方も盛り込まれていますから、1枚の絵からストーリーを想像する楽しみもあります。
ゲームコンセプトアートを作る上で必要な力は?
読解力
ゲームコンセプトアートはゲームの企画をまるごと画像化したものです。そのためアーティストはゲームの企画書を細部までしっかり読解し、画像の中に盛り込まなければなりません。またゲームの企画を立てた人との打ち合わせから、作り手が伝えたいことを読み取る力も要求されます。 アーティストはゲームの企画を読解し、イメージを膨らませてコンセプトアートを作り上げるために、読解力やメッセージのまとめ力、発信力、3Dおよび2Dツールの利用経験などが必要です。
メッセージをまとめる力
ゲームコンセプトアートの制作者は、ゲームのメッセージを画像で伝えなければなりません。そのため、描くキャラクターや道具、構図や色合いなど全ての要素にこだわる必要があります。例えば異世界が舞台のファンタジーRPGでも、友情や希望を語る明るいゲームと、絶望的な状況からの逆転を描くハードなゲームとでは、選ぶべき色合いやタッチは全く異なります。
また、多くの要素を盛り込むことばかり考えてしまうと、情報が多すぎて伝えるべきことが見る側に届きにくくなることもあります。それを踏まえて、コンセプトアーティストはメッセージやテーマを効率的に伝えるように配慮する必要があります。
発信力
コンセプトアーティストはゲームコンセプトアートを、勝手にイメージして書くわけではありません。開発するゲームのコンセプトを見る人に伝えることがコンセプトアートの目的です。そのため、ある程度書いたところでゲームを企画した人のイメージにあっているかを発信し、方向性があっているかをすりあわせながら作業を進める必要があります。
3DCGツール及び2Dツールの利用経験
コンセプトアートを担当するアーティストは、依頼者の要望に応えるためにできるだけ多くの引き出しを持っている必要があります。その中でも3D及び2DCGツールの操作スキルは必須です。またデッサン力や、色彩選択の知識もあった方がよいでしょう。
ゲームアートコンセプトの役割
ゲームアートコンセプトは、ゲーム開発の初期段階で設定され、ゲーム全体のビジュアルスタイルを決定します。以下に、ゲームアートコンセプトが持つ役割をいくつか紹介します。
統一感の提供
ゲームアートコンセプトは、ゲーム内のすべてのビジュアル要素に統一感を持たせる役割を果たします。これにより、プレイヤーは一貫した世界観を体験することができ、ゲームの没入感が向上します。
デザインの方向性を示す
ゲームアートコンセプトは、キャラクターデザインや背景アートなどの具体的なデザイン作業における指針となります。デザイナーは、このコンセプトに基づいてデザインを進めることで、ブレのないビジュアルを作成することができます。
チームの連携を促進
ゲームアートコンセプトは、開発チーム全体に共有されるため、異なる職種間での連携をスムーズにします。プログラマーやシナリオライター、サウンドデザイナーなど、すべてのメンバーが同じビジュアルイメージを共有することで、ゲーム全体の一貫性が保たれます。
魅力的なゲームアートコンセプトの要素
魅力的なゲームアートコンセプトを作成するためには、いくつかの重要な要素を考慮する必要があります。以下に、その要素をいくつか紹介します。
独自性の追求
魅力的なゲームアートコンセプトを作成するためには、他のゲームにはない独自のスタイルやアイデアを取り入れることが重要です。これにより、プレイヤーに強い印象を与えることができます。
一貫性のあるビジュアル
ゲームアートコンセプトは、一貫性のあるビジュアルを提供する必要があります。キャラクター、背景、アイテムなど、すべてのビジュアル要素が統一されたスタイルで描かれることで、ゲーム全体の統一感が生まれます。
ディテールへのこだわり
細部にまでこだわったデザインは、プレイヤーにとってリアルで魅力的な世界を提供します。キャラクターの衣装や背景の細かい装飾、アイテムの質感など、細部に至るまで丁寧に作り込むことで、ゲームのビジュアルクオリティが向上します。
ゲームアートコンセプトの制作プロセス
ゲームアートコンセプトを作成するためには、いくつかのステップがあります。以下に、そのプロセスを詳しく説明します。
1. リサーチとインスピレーション
まず最初に、ゲームのテーマやストーリーに基づいてリサーチを行います。これは、関連するビジュアルスタイルやデザイン要素を集めるための重要なステップです。インスピレーションとなる画像やアート作品を集めることで、コンセプトのアイデアを膨らませます。
2. コンセプトアートの作成
次に、リサーチを基にしてコンセプトアートを作成します。これは、ゲームのビジュアルスタイルを具体化するための初期段階のデザインです。キャラクター、背景、アイテムなど、ゲーム内の主要なビジュアル要素を描き出し、全体の雰囲気をつかみます。
3. フィードバックと修正
コンセプトアートが完成したら、開発チーム全体で共有し、フィードバックを受け取ります。ここで重要なのは、全てのメンバーがコンセプトに対して共通の理解を持つことです。フィードバックを基にして修正を加え、最終的なコンセプトを確定します。
4. 詳細なデザイン
最終的なコンセプトが確定したら、それに基づいて詳細なデザインを進めます。キャラクターデザインでは、表情やポーズ、衣装の細部まで作り込みます。背景アートでは、光と影の描写や質感の表現にこだわり、リアルで魅力的な世界を描きます。
コンセプトアートの書き方例
ここからは、コンセプトアートを書く際の流れを解説します。とはいえ、コンセプトアートの作画方法や手順は決められたものではないので、下記はあくまでもひとつの例であることはご理解ください。
ラフの作成
まずラフスケッチでアイデアや要素を出し、何をどんなレイアウトで描くのかを考えます。ある程度書いた段階でクライアントと一緒に確認やすりあわせを行います。この、ある程度書いて確認するというサイクルは、何度も繰り返されることが一般的です。この工程で最も重要なのは、ゲームコンセプトアートをどんなものにするのかを、クライアントとアーティストの双方が納得できるまで意見を交換することです。
シルエットをつける
ラフスケッチで方向性が決まったら、画像にグレーのシルエットを付けて立体的な把握を進めます。この工程は特に3DCGでコンセプトアートを描く際に重視されます。線画だけでは立体感をイメージしにくいからです。
立体感を作る
前の項目で与えた立体感をさらに際立たせ、仕上がりが予想できるものにしていきます。また、光源を踏まえた陰影をつけることで、立体感に加えて描くアートの情景も明瞭化します。
詳細を仕上げる
色を細かい点まで塗り分けたり、背景を加えたりしてコンセプトアートを仕上げていきます。また複数のレイヤーを使って色合いに変化をつけるなど、テクニックを駆使してゲームのコンセプトを際立たせます。
まとめ
ゲームアートコンセプトは、ゲームのビジュアルスタイルを決定し、プレイヤーにとって魅力的な世界を創り出すための重要な要素です。独自性、一貫性、ディテールへのこだわりを持つことで、プレイヤーに強い印象を与えることができます。また、リサーチ、コンセプトアートの作成、フィードバックと修正、詳細なデザインといったプロセスを経ることで、魅力的なゲームアートコンセプトを作り上げることができます。
コンセプトアートはゲームの源流。チームでゲーム制作をするとき”ここを目指そう”の目標になる部分です。その目標を実現するために、ゲーム開発チームの最初の原動力となります。コンセプトアーティストは非常にやりがいある仕事です。
ゲームアートコンセプトを通じて、素晴らしいゲーム体験を提供することを目指しましょう。
なお、弊社ではお客様にゲームアート制作サービスを提供しています。ご興味がある場合はお気軽にこちらからご相談ください。
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